宮崎正弘の国際ニュース・早読みで短期連載はじまる
メルマガ、宮崎正弘の国際ニュース・早読みより転載。
http://melma.com/backnumber_45206_6618499/
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【短期連載】 「正定事件」の検証─カトリック宣教師殺害の真実(1)
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「正定事件」の全貌と真相を初めて明らかにした研究書
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拓殖大学客員教授 藤岡信勝
まもなく終わろうとして今年(2017年)は、日本近代史の中で日本が関わった戦争について、戦後の東京裁判史観の呪縛を解き放つ歴史研究が画期的に進展した年でした。注目すべき著作がいくつも刊行されました。個別のテーマに関しても、日本人こそが被害者となった通州事件などの解明も進み、中韓との歴史戦において、攻勢的・予防反撃的な成果をあげています。
そして、年末に至って、今年の一連の歴史戦著作刊行の掉尾(とうび)を飾る一冊の本が産声を上げようとしています。それが、
峯崎恭輔著『「正定事件」の検証──カトリック宣教師殺害の真実』(並木書房刊)です。
本書は、正定(せいてい)事件について、世界で初めて、一次史料に基づき実証的に書かれた研究書です。私はこの本の刊行に少しばかり関わった立場なので、本書の意義をぜひ広く、心ある日本人に理解していただこうと考えました。そこで、通州事件80周年の集会でも事務局長を引き受けていただいた宮崎正弘先生にお願いして、著者自身に、本書の内容を少しだけ書いていただこうと思い立ちました。先生にはご快諾を賜り、かくして、日本最大の読者数を誇るメルマガに登場させていただく栄に浴することとなった次第です。
本書の成立は、2015年の秋に都内で開催されたある会合に起点をもっています。その会合では、正定事件の本質と現状が語られたのですが、出席した私は意見を求められたので、「正定事件の真相をなるべく早く本にして出版しなければならないと思う。すでに遅れをとっているが、真実はわれわれの側にあるのだから、あくまで実証的事実に基づいて本を書いて、それを拠点に反論を展開してゆくべきではないか」という趣旨の発言をしました。そして、その場でこの問題に取り組みたいという方にボランティアとして名乗りを上げてもらい、チームをつくって支えていくようにすることも提案しました。
その結果、カトリックの女性信徒として、事件が反日の宣伝に使われつつあることを憂慮し、その思いを共有するカトリック信者の仲間の方々と協力してすでに資料を集めていたNさんを中心に4人のチームができました。やがて、フェイスブックを経由して、著者の峯崎さんと巡り会いました。日本には、地方にお住まいの方で、志をもって歴史の研究に地道に取り組んでいる人々がおられます。これこそ、日本の底力を示す文化的事実です。峯崎さんは、まさにそのような方々のお一人でした。
私が正定事件の詳細を初めて知った会合から丁度2年で、この本が予定どおり誕生し、正定事件80周年の今年の内に刊行に至ったことは、本当に嬉しい限りです。著者の峯崎さんをはじめ関係者の並々ならぬご努力に心から感謝と敬意を表する次第です。
では、早速、著者自身による事件の解明の一端をお読み下さい。(2017.12.4記す)
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【短期連載】
「正定事件」の検証─カトリック宣教師殺害の真実(1)
峯崎恭輔
日本軍による慰安婦確保が犯行目的というインチキな学説をもとに、殺害された宣教師の 「列福(れっぷく)運動」がバチカンに対して行なわれています。このままでは第二の慰安婦問題になりかねません──1次史料をもとに「歪曲された悲劇」の真相に迫ります。
▼ 拉致殺害された9人のヨーロッパ人宣教師
「正定事件」というカトリック宣教師殺害事件に関する報道がなされてしばらく経った。この間、日本側でも1次史料の分析が進み、オランダや中国の主張に対抗することが可 能になってきた。その嚆矢(こうし)として近く研究書を出版する。
そもそも、この「正定事件」の何が問題なのか整理してみたい。事件そのものは80年もの前、1937(昭和12)年10月に中華民国河北省の正定(せいてい)で発生した、ヨーロッ パ人宣教師ら9人の拉致殺害事件のことである。
7月に勃発した支那事変の過程で、日本軍部隊が「正定」という古い城塞都市を占領した。その夜、城内のカトリック宣教会から正定教区のトップ、フランス・シュラーフェン 司教(63)ほか8人が謎の武装集団に連れ去られ、その後二度と戻ることはなかった。犯人は捕まることなく、後日、拉致被害者全員死亡を思わせる遺留品や遺骨の一部が発見された。そういう事件である。
現代の日本にとって問題なのは、この事件そのものではない。死亡した司教らを顕彰しようと活動するシュラーフェン財団などが、犯罪を日本軍によるものと断定しているだけでなく、200人もの婦女子を慰安婦として日本軍が強制的に駆り出そうとしたものを、司教らが身体を張って食い止め、火に焼かれて殉教したという話をすっかり信じ込んで宣伝していることである。
顕彰活動は「福者」という「聖人」に次ぐカトリックの称号をバチカンの教皇庁から授けてもらおうという「列福運動」に集中していて、そのためにあらゆるメディアやイベントなどの方法を駆使して宣伝した結果、オランダをはじめとするヨーロッパでは事実として語られてしまっている。そしてバチカンを敵対視しているはずの中国もまた、格好の歴史戦の鉄砲玉を見つけて便乗参戦してきているのである。
もし、シュラーフェン財団の主張が事実であるならば、以前櫻井よしこ氏の取材で明らかになった日本政府の姿勢、つまり犠牲者の列福に何の異存もないと言わざるをえないところである。しかし、当時の1次史料の研究が進み、我が国の名誉と国益を損なう事案であることがはっきりした以上、とてもではないがこの現状を見過ごすことはできないのである。(次回に続く)
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